編み物にまつわることあれこれ
knit 1. 編むことは 数えることと 心得たり
knit 2. 編む順序
knit 3. 糸と編地とデザイン
knit 4. デザインのヒント
knit 5. サマーヤーン
knit 6. 糸の必要量
knit 7. 編み目を均一にする
knit 8. 毛糸の太さと針の号数
knit 9. 棒針編み・かぎ針編み
knit 10. 編み物は難しい
knit 11. 編み物を生業とする
knit 12. 毛糸の太さ表記
かぎ針編みはもちろん、棒針編みでも、とにかく目を数えることが大切です。
数えながら編む。1段終わったら数える。
これをすることで、編み間違いや目を落とすことが圧倒的に減ります。また、間違ってしまっていても気づくのが早く、修復が容易です。
編地を目の前に「どうしてあわないの?」と悩むあなたにこの言葉を贈ります。
"Don't think. COUNT!!"
「考えるな。数えるんだ!」
さて、数えるために便利なのが、目数リングや段数マーカーというものです。
目数リングというのは、一般的に閉じた輪っか状のもので、棒針に通して使います。
目数が多い時に20目おきに入れておいたり、模様の切り替え位置が分かりやすいように入れておいたり、といった使い方をします。
段数マーカーは、輪っかの一部分が開いていて、編地に引っ掛けたり外したりが容易にできるようになっています。
また、安全ピンのような形のマーカーもあります。引っ掛けるだけの物は、落とすことがよくありますが、これなら落とす心配はありません。
セーターの場合、一般的に、後ろ身頃から始め、前身頃、袖の順で編んでいきます。
増減の少ない、広い編地を先に編むことで、手が安定し、前身頃、袖と増減の操作の多いパーツもきれいに仕上げることができる、というのがその理由です。
又、もし毛糸が足りなくなって買い足し、ロットが違ってしまった場合に、背中より腕のほうが動きも多く目立たちにくいだろうということでもあるそうです。
これらの理由ももっともなのですが、個人的には大物は先に片づけて、後に小さいパーツを残した方が気分的に楽なので、そうしています。
”気分的に”といえば、袖やカーディガンなどの前開きの服の左右前身頃は2枚同時に編みます。1枚1枚編むよりまとめて編む方が気分的に楽なので。
”どういった物を編むか”の決め方は、大きく分けて
① デザイン先行で、そのイメージに合う糸を探す場合
② 糸からイメージが膨らんで、デザインが決まる場合
の2つです。
①からスタートして、なかなかイメージ通りの糸が見つからない時や、とても魅力的な糸に出会った時など、途中で②に変わることもしばしばです。その場合、最初のデザインはお蔵入り。
糸自体がとても素敵でも、どんなデザインのものがいいのか思い浮かばないこともあります。そんなときは、糸がお蔵入り。
さらに、このデザインでこの糸で、と決めても、実際に編んでみると編地がイメージと違った、ということも起こります。編地(模様)を変えるか、糸を変えるか、はたまたデザインから見直すか… 悩みに悩んで、編んで編んで、試行錯誤の連続です(製作過程の中で、これが一番楽しい時間だったりもしますが)。
糸と編地とデザインのどれもが一番輝く組み合わせを見つけたい、といつも願っています。
「デザイン」というと、模様や色、襟の形とかディテールの凝りようを言っているように思いますが、実は身幅のゆとりや、襟ぐりの広さ、着丈・袖丈などいわゆる「シルエット」を決めることがもっとも大事なことです。でも、なかなか「身幅のゆとりは4㎝ね」なんてパッと数字で言えないですよね、ふつう。
では、どうするかというと、手持ちの洋服で気に入っているシルエットのものを測ってみます。あるいは、常々この服があと2㎝長ければなーなんて思っていたら、それを形にするのです。
また、デザインのヒントとして雑誌やカタログの「いいな」と思った服の写真をスクラップしておくと役に立ちます。(※あくまで、ヒントです。ブランド物をコピーするのはやめましょう。)服そのものだけではなく、編地の模様なども参考になります。色使いや素材の組合わせに着目すると、ニット商品だけでなく幅広くヒントになるものがあります。
サマーヤーン
夏糸(サマーヤーン)は主にコットンやリネンなどの糸のことです。
素材が夏向きであるのは言うまでもありませんが、その特徴として覚えておかなければいけないことは、ウールを主とする冬糸に比べ伸縮性がないことです。夏糸を使用した作品が一般的にかぎ針編みに多いのは、かぎ針編みは編地自体に伸縮性が乏しいので、夏糸に合っているからです。もちろん、棒針編みできないわけではありませんが、初心者向けの糸ではないと言われます。確かに、目は揃いづらく、止めの糸加減も難しいので上級者向けだと言えるでしょう。
しかし、夏糸の特徴を生かした棒針編みの作品にも、涼しげで捨てがたい魅力があります。
夏糸でウェアをデザインするときは、
1.伸縮性のなさを考慮したゆとりを持たせる。
2.ローゲージでざっくり編む。
のどちらかをメインにデザインすると作りやすくなります。
「~を編みたいのですが、毛糸を何玉買えばいいですか?」
何かを編み始めるとき、初心者さんもベテランさんも悩むのがこれ。
● 何を(ベスト、セーター、カーディガンetc)
● どんなサイズで
● どんなデザインで(袖丈、身丈、衿、編地etc)
など、糸の量を左右する要因は様々あります。編む人の手によっても若干違いがでます。
また、例えば1玉40gといっても、メーカーや糸の素材、もちろん太さによって糸長が異なりますので、セーターが5玉で出来たり、12玉必要だったり。
本当に、こればっかりは、編んでみないことにはわからない、としか言いようがないのです。
私としては、ラベルに書いてある標準ゲージのほかに、標準ゲージで編んだ時に1玉でどれだけ(〇㎝×〇㎝ とか)編めるかを記載してくれると参考になっていいのになー、と思うのですが… メーカーさん、いかがでしょう?
メーカーさんの中には、ラベルに参考としてベスト〇玉、セーター〇玉、カーディガン〇玉と書いてくれている場合もありますね。
出来るだけ買い足したくない、でも余るのももったいない。
「買い足したくない」を優先するなら、多めに買っておく。
「余るのがいや」の方が勝つなら、最初に1玉買って、ゲージを取って必要量を算出してから買う。
のどちらかです。
どちらにしろ、足りなければ当然作品が出来上がらないので、 多かれ少なかれ糸は余ります。
余った糸は小物を作ったり、モチーフを編んでつないだり、編み込み模様に使ったり、編物以外にラッピングなどにも利用できます。
でも、いろんな種類の糸がたくさんたまってくると、それだけで楽しいものですけどね。
編み物の仕上がりが美しく見えるには、「編み目が揃っている」ということが大きな要素になります。
では、どうすれば編み目が揃うのでしょう?
たくさん編むこと?
もちろん、たくさん編むことで手が安定してくるのですが、ただ数多く編むのではなく、規則正しく編める編み方をマスターすることが重要です。
それを図解入りで丁寧に詳しく解説して下さっているのがこちら、
「たた&たた夫の編み物入門 http://tata-tatao.to/」
このサイトの「基本的技法徹底図解」のページに表編み、裏編みそれぞれ(どちらもフランス式のみ)の針の持ち方、
糸のかけ方、針の動かし方を本当に徹底的に解説して下さっています。
私もとても参考になったサイトです。
(編み物に関して色いろと研究されている記事がとても興味深く、勉強になります。)
さらに、目を揃えるということにおいて、実は最も大事なのが、糸を持つ左手(フランス式の場合)です。
編む方にばかり気が行って忘れられがちですが、左手にかける糸の張り(テンション)が一定であることによって目が揃うのです。
人それぞれ慣れている方法があり、変えると編みづらく、却って目が揃わずぐちゃぐちゃに…ということが起こり得ます。
しかし、始めはゆっくり時間をかけて一つ一つの動作を確認しながら、無意識にでも手がその位置に、その動きになるように繰り返し繰り返し編むことで、きれいに、しかも速く編めるようになります。
一度ついた癖を取るのはなかなかですので、根気が必要です。
基本の動作がきちんとできるようになれば、自然と目が揃ったきれいな編み地が出来ているはずです。
糸の必要量 と共に、編み始めるに当たって必ず聞かれるのが何号で編めばいいですか?というご質問です。
通常その糸に合う針の号数は毛糸のラベルに書いてあります。では、ラベルがついていない糸の場合は?
毛糸の太さの2、3倍程度の太さの針でスワッチを編んでみます。目視で、だいたいでかまいません、「試しに」ですから。
ゲージがちがうなー、と思えば号数を上げるか下げるかして再度スワッチを編みます。
ちなみに、棒針の号数と直径は以下のとおりです。
3号=3㎜、号数が下がるごとに1号当たり0.3㎜細くなり、同様に号数が上がるごとに1号当たり0.3㎜太くなります。
例えば、8号なら (8-3)×0.3+3=4.5㎜です。
オリジナルの作品を作ろうとするとき、編地に関するデザインは毛糸の種類、編み方のほかに針の号数を変えるというバリエーションもあります。棒針の場合(※)、号数を上げて目を大きくするとローゲージ、号数を下げて目の詰まった編み地にするとハイゲージといいます。
糸の必要量の話でも結論は「編んでみないとわからない。」でしたが、これこそ、編んでみないとわからないとしか言いようがないのです。
いろいろ試してみると面白い発見があるやもしれません。
※通常、かぎ針の場合はゲージぴったりの針を使い、ローゲージ・ハイゲージにすることはめったにありません。
日本では、棒針編みもかぎ針編みもひっくるめて「編み物」と言いますが、英語では knit(棒針編み)と crochet(かぎ針編み)とをひとくくりにする言葉はありませんよね(「手仕事礼賛」の中で林ことみさんも書いておられましたね)。
「編み物」ときいて思い浮かべる映像は、たぶんほとんどの方が棒針編みだと思うんですよ。編んでいるところじゃなくても、毛糸玉に棒針が刺さってる絵とかね。
でも、実際に編んでいるのは、というと圧倒的にかぎ針編み人口の方が多い、不思議。
棒針編みとかぎ針編みって、道具も動きも全く異なるのに、毛糸を使うっていうだけでひとくくりにされます。かぎ針編みとレース編みの方がよっぽど近いのに、別扱いです。
棒針編みとかぎ針編みは別々の手芸カテゴリとして扱うべきだと思うんです。日本手芸普及協会の手編みの資格も、現在は「講師」「指導員」は棒針編みとかぎ針編みが別です(準師範以上は一緒)。
手芸をされる方は、あれもこれもっていう方がやっぱり多いですから、どちらもやるっていうことには変わりはないのかもしれないけど、分類として全然違うと思うんですよね。
レシピと言えば、お料理やお菓子の調理法を指すものだと思っていましたが、最近は手芸にも「材料及び作り方」という意味でつかわれていますね。
レシピに重要なのは、再現性があるかどうか、だと思います。つまり、そのレシピを見て作った時に元の作者の作ったものと同様に作れるのか、ということ。
お料理やお菓子は材料の分量、調理の手順、それぞれの工程での時間やコツなどを書くことでかなりの再現性が担保されます。ところが、編み物の場合は編み図や文章に表現できない部分が多くあって、これが本当に難しいのです。 本の指定の糸で、本に載っている通りに編んだのに、同じようにできなかったという経験があるという方、多いのではないえしょうか。
再現性が低い原因はやはり基本的な「編み方」の統一が図られていないからだと思います。針の持ち方、糸の持ち方、糸の張り方、かけ方等々…人によってばらばら、十人十色です。いわゆる「手が違う」から同じには出来ない。ですから必然的に多少サイズが違っても問題のない物や直線的なデザインが多くなるのもうなずけます。
一方、古い編み物の本などは今よりずっと複雑なデザインのものを、今よりずっと簡略な説明で載せています。昔の人はみんな編み物が上手だった?いえ、上手と言うより、身近だったのではないでしょうか。
洋裁や編み物で衣服を家庭で作るのが当たり前だった時代、今よりもっとお教室もたくさんあったし、周りにいくらでも聞ける人がいたでしょう。
今は YouTube先生が何でも教えてくれますが、やはりそばで実際に見て質問をしながら、どこを直すべきかを指摘してもらわないとわからないことはあります。教える側もどこが違っているのか、目の前で見ないとわかりません。
やってはみたものの出来上がらなくて、「編み物は難しい」「編み物が嫌になってしまった」ということもよく聞きます。せっかく編物に興味があるのに、できないと「思い込んで」しまうなんて、なんてもったいないことでしょう。
本の通りに出来上がらないのは、あなたが悪いのではないのです。是非、ちゃんと習ってみてください。編める人(教える人)と編めない人(教わる人)が対面したとき、編み物は「難しい」から「楽しい」に変わるはずです。
編み物の仕事は、大きく分けて3つです。
① 編む仕事
・自分の編んだものを売る。
・メーカー(ブランド)の製品を編む。
② 創る仕事
・服や編地をデザインする。
・芸術作品として編み物をする。
③ 教える仕事
・編み物教室等で教える。
(編み物雑誌の編集、手芸店、糸のメーカーなどなど関連する仕事はほかにもありますが、編み物が出来ないとダメっていうことではないのでここでは省きます。)
編み物を仕事にしたいと思う方は、どれをイメージしておられるでしょうか。
今は、ネットで誰もが作ったものを簡単に売ることができますから、一番ハードルが低いのは①の1つめでしょうか。2つめのいわゆる「編み子さん」がたぶん”編む”ことに関しては一番のプロでしょうね。
②はたぶん最も少数、でもなりたい人は一番多いかな。1つめは単独名で本が出せて、デザインしてスワッチ編むだけで、後はお弟子さんに任せる事ができるような有名な先生。2つめは最近見かけることが増えた気がします。
③は学校の講師として教えるか、自分でお教室を持つか…
実は、それぞれ単体ではどれも「生業」にはなりません。つまり生活できるほどには稼げないのが実情です。
編み物をする人ならだれもが知っている有名な先生でも、です。
自分の教室を持ち、講師として全国飛び回り、雑誌や糸メーカーにデザインを提供し、本を出し、作品やキットを売るというように複合的に仕事を抱えて多忙を極めてやっと、という感じ。
そして、業界自体が大変狭いので座れる席はごくわずかで、しかも満席です。空席待ちの行列は長く、私なんてその最後尾で「これ、何の行列ですか?」とうろうろしているような状態です。
どんな仕事も楽じゃないよね。
毛糸の太さを表すのに使われる「合細」とか「並太」といった言葉、実は、明確な規格があるわけではなく、「大体、棒針〇号相当の糸」程度の基準です。
一応、細いほうから並べると、極細、合細、中細、合太、並太、極太、超極太…
私自身、毛糸は自分で実際にスワッチを編むことで使用号数を決めるので(コチラ参照「糸の太さと針の号数」)、あまりこの分類を使うことはないのですが、最近、目にすることもほとんどなくなりました。
その理由として、昔よりも毛糸の種類が豊富になっていることがあげられると思います。
昔はほとんどがウールかアクリルのストレートヤーンで、単純に太さによって針の号数を変えればいいという考え方だったんでしょう。
しかし、現在は様々な変わり糸もあり、海外からの輸入糸も一般的に入手しやすくなって、多様化しています。
新しい素材を複合的に使ったものや、リリヤン状の糸にスライバーを吹き込んだものなど技術も進歩しています。
メーカーが「この糸は、太い針でゆったり空気を含ませながら編むと風合いが良い」と判断した場合、糸の見た目より大きい号数を推奨号数として指定するでしょう。
糸のラベルに書いてある針の号数とゲージを見ると、そういった想いもくみ取れて、面白いのではないでしょうか(勝手な想像ですが…)。
ちなみに、海外にも似たような表記はあり、英語だと細いほうから以下のようになります。
Lace/2ply、Light fingering/3ply、Fingering/4ply、Sports/5ply、DK(Double Knitting)/8ply
Worsted/10ply、Alan/10ply、Bulky/Chunky/12ply